
新幹線で鹿児島へ向かい、そこから普通列車に揺られて指宿(いぶすき)へ。さらにレンタカーを借り、枕崎を目指して南薩摩を巡った。

途中で立ち寄ったのが、JR日本最南端の駅として知られる「西大山駅」。ホームの向こうには、「薩摩富士」とも呼ばれる開聞岳(かいもんだけ)が美しい姿を見せていた。青い空と緑の茶畑の中に堂々とそびえる姿は、まさに絶景だった。


しかし、約80年前、知覧(ちらん)飛行場から沖縄へ向けて飛び立った特攻隊員たちにとって、この開聞岳は、鹿児島本土で最後に目にする故郷の風景だったという。機上からその姿を横目に見送り、やがて山が見えなくなった頃、二度と帰ることのできない覚悟を決めたと語り継がれている。
今、目の前に広がるのは、静かで穏やかな開聞岳。その美しさの奥に刻まれた歴史を思うと、単なる観光地として眺めることはできなかった。
旅の素晴らしさは、美しい景色を楽しむだけでなく、その土地の歴史に触れ、遠い過去に思いを巡らせることにもある。今回の旅は、景色を見るだけでは得られない大切なものを、心に残してくれた。
帰りの新幹線で、一緒に旅をした仲間が、ぽつりと言った。
「開聞岳は、たくさんの特攻隊員を見てきたんだろうな……」と。
